日本心臓移植学会の前身にあたる日本心臓移植研究会は、1981年の国際心臓移植学会の設立に相応して、その2年後の1983年に、川島康生、小柳仁、平明、雨宮浩ら先達によって、わが国での心臓移植の普及と発展のため発足し、これまで40年以上にわたり本邦における心臓移植医療の発展に多大なる貢献をしてまいりました。
1997年に臓器移植法が制定され、1999年に心臓移植の再開一例目が実施され、わが国における心臓移植の幕開けとなりました。
しかし、非常に厳しい法律と提供条件の制約のため、心臓移植は年間10例にも及ばず、社会的に広く普及するには至りませんでした。
しかし、移植症例数は少ないながらも粛々と実績を積み上げ、世界に誇れる成績を上げてきたことは関係者各位の並々ならぬ努力と情熱の賜物です。
2010年7月からは改正臓器移植法が施行され、家族の判断で脳死での臓器提供が可能となり、また15歳未満ドナーからの臓器提供が可能になり、小児重症心不全患者の道も開けました。
一方で、2011年、Bridge-to-transplantation (BTT)としての在宅療養や復職が可能な植込型補助人工心臓が保険償還され、その後、植込型補助人工心臓の発展により人工心臓特有の重篤な合併症も減少し、心臓移植への到達率も飛躍的に上昇いたしました。このように重症心不全の治療成績が向上するとともに重症心不全治療が広く周知され、移植希望登録患者数は急増し2024年現在、800名を超えた患者様が心臓移植を待機しております。心臓移植実施数も臓器移植法改正後、徐々にではありますが確実に増加傾向にあり、2023年に年間100例に到達いたしました。しかし、いまだに移植希望登録患者数に比較しドナー提供数は極端に不足しております。また、仮にドナー提供数が十分に増加したとしても、現在、携わる医療関係者の数も大きく不足しており、医療体制の構築が喫緊の課題として挙げられます。
一方、本邦では心臓移植は65歳未満に限られており厳しい適応基準を課しているため、移植適応から外れる重症心不全患者様に対してはBTTとしてのみ保険償還されていた植込型補助人工心臓を装着することができませんでした。2021年より、移植適応基準から外れた場合でもDestination Therapy (DT)としての植込み型補助人工心臓の選択枝が可能となり、心臓移植適応とならない重症心不全患者様についても救命する道が開けました。2023年末の時点では100名近い患者様がDTとして補助人工心臓装着手術を受けられております。DTの更なる普及および患者さんのQOL向上のためには、患者さんが居住する地域でDTが可能な体制の整備が必要と考えます。
心臓移植が再開されてから四半世紀が経過し、累計800人を超える患者様が心臓移植を受けることができました。心臓移植後の生存率は10年89%、15年80%と海外と比較しても遥に良好な治療成績です。また、2011年以降、1400名以上の患者様が植込型補助人工心臓を装着されました。補助人工心臓の治療成績は3年87%、5年でも80%程度と良好ですが、救命できない患者さんを助けるためには、更なる補助人工心臓の治療成績の向上やドナー増加による待機期間の短縮が必須です。海外では心停止ドナーからの心臓移植に対する臨床成績や、ブタから人への心臓移植の臨床報告など新しい形の心臓移植が報告されております。日本においても、現在の医療および移植制度では救命困難な重症心不全治療のためには今後避けて通ることができない議論であります。
そして、心臓移植・心肺移植および重症心不全に対する補助人工心臓治療の更なる発展および普及に貢献し、もって国民の健康と福祉に寄与することを目的として、2024年1月日本心臓移植研究会およびDT研究会は一般社団法人日本心臓移植学会として新生する事となりました。浅学非才の私ではありますが、重症心不全の両輪である心臓移植と補助人工心臓治療のさらなる普及をめざし、粉骨砕身を惜しまず貢献できればと思っております。今後とも本会の発展にご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
一般社団法人 日本心臓移植学会
代表理事
澤 芳樹
代表理事 | 澤芳樹 |
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副代表理事 | 布田伸一 |
理事 |
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監事 |
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名誉役員 |
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名誉会長 |
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特別会員 |
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名称 | 一般社団法人 日本心臓移植学会 |
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会員数 |
施設会員 143 施設 個人会員 558 名 2023年10月24日現在 |
本学会の目的 | 当法人は、心臓移植・心肺同時移植及び人工心臓等の研究の発展及び普及に貢献し、人類の健康と福祉に寄与することを目的とする。 |
事業内容 |
(1)会員の学術集会及び学術講演会等の開催 (2)内外の関係学術団体との連絡及び提携 (3)心臓移植・心肺同時移植及び人工心臓等に関する普及啓発 (4)心臓移植・心肺同時移植及び人工心臓等に関する症例登録及び予後調査 (5)その他前条の目的を達成するために必要な事業 |
事務局 |
一般社団法人 日本心臓移植学会 事務局 E-mail: info@jshtx.co.jp |